2012年4月27日金曜日



如何にも三津田信三らしいホラーとミステリーが融合された作品だ。作品の要となる「迷宮草子」と言う同人誌はいわくつきの本で、そこに収録されている短編を読むたびに、その短編に似合った怪奇現象が起こる。その怪奇現象から逃れるには、その短編の謎を解かねばならない。つまり、短編小説=出題、それを読んでる側=解答となる訳だ。この構成が実に面白い。ちなみに、飛鳥=ホームズ、三津田=ワトソン…っと言った感じになる。

「霧の館」
立ち込める霧と迫りくる夕闇の為、道に迷った僕が、辿り着いた洋館で薄気味悪い体験をする話。ドッペルゲンガーを題材にした話だが、そのゴシックホラー的と言うか、西洋怪談的な雰囲気とストーリーが完全に私好み。しかも登場する儚げな白いドレスの少女が、これまた完全に私好みだ。そんな訳で、相当に楽しんで読んだ作品だった。解答編も意外な事実があったし、それなりに納得できる回答だった。但し、同時に二人の少女を目撃するシーンの回答は、いくらなんでも納得できないなぁ。

「子喰鬼縁起」
子喰鬼と言う妖怪伝説が残る朱雀神社。この神社の夏祭りの日に、見世物小屋から赤ん坊が誘拐される話。前半は和風伝奇もののような展開、後半が密室下における人間消失ミステリーになっている。そんな訳� �、後半が単なるミステリーになっているので、まったく怖くないの難。…なのだが、解答編になってからむちゃくちゃ怖くなる。特に三津田が書庫に閉じ込められるシーンの怖さと言ったら。ミステリー部分の謎解きも納得いくし、かなり面白いエピソードだ。


動物愛護協会、ティントンフォールズニュージャージー州

「娯楽としての殺人」
ある下宿で他殺とも自殺ともつかない事件が起こる。そこに住んでいる女子大生が、親友殺しを計画する者が書いた「娯楽としての殺人」という原稿を手に入れたため、彼女は下宿の住人の誰かが犯人と推理するが。…会話や原稿から犯人を探していく純粋なミステリー。ホラー要素がまったくないので、少々物足りない。とりあえず、解決編では怪奇現象が起こるが、これまでも二つのエピソードと比べれば、恐怖度が低い。ラストの謎解きもそれほど意外な真相でなかった。一応、延々と語られるミステリーやホラーのウンチクが最大の読みどころだろうが、(私が)すべて知っている事なので、特に面白� �とも思えなかった。些か、期待ハズレ。


イグアスの滝へアスンシオンパラグアイ

「陰画の中の毒殺者」
山の避難所で老人が語った一つの話。それは一人の女性と、彼女を慕う五人の男性の話。そして起こる毒殺事件。…本エピソードは完全に純粋なミステリー。それも私が苦手なパズルミステリー(パズルミステリーと言うのは、どうも冷たい数式だけで、そこに血の通ったドラマがないので苦手だ。)。しかもホラー要素がまったくなく、些か拍子抜けした。そう言う意味もあって、本エピソードはそれまでのエピソードと比べて異色。怪奇現象が起こらないと言うのもそうだが、真相の回答が三つ示され、そのどれが正しいのか最後まで分からない。個人的には明日香の回答が一番正しいように見えるが、何となく釈然としない� ��わり方である。そして、「迷宮草子」に関しての事実が少しだけ分かるが、だからと言って、光が見えてくる訳ではない。いよいよ混迷を呈してきた感じのエピソードだった。とりあえず、明日香萌え…っと言う事で(笑)。


世界のどのくらいのパーセントは、自転車レーンを持っている?

「朱雀の化物」
S地方の山荘「岸壁荘」で起こった高校生惨殺事件の話。これまでのエピソードとはうって変わって、「13日の金曜日」のようなスプラッターホラー。ただこう言うスラッシャーと言うか、殺人鬼ホラーってあまり好きじゃないし、イジメを題材にしているので、不愉快な描写がかなり多く(読んでいて、非常に苦痛だった)、とても好みの作品とは言えない。もっともイジメっ子が惨殺されるシーンはある意味痛快だが(こう言う人間は殺されて当然)。ただ、そこで終わってないのが、このエピソードの良いところ。なんと最後を「そして誰もいなくなった」風に閉めたのだ。このため、ラストで一気にミス� �リー色が強くなり、実に楽しい作品になっている。さて、その後の解決編だが、前回で怪奇現象が起きなかったため、今回はその分たっぷりある。基本は殺人鬼ホラーで大したことがないのだが、これに闇の恐怖(闇の描写が上手い)と、「坂の怪談」の要素をプラスしているため、実に恐い。真相は、確かに犯人も意外だが、「記録ノート」と言う物自体をトリックに使っており、なかなかのものだと思う。しかも、真相が分かっても、不気味な余韻を残す辺りも見事。


「時計塔の謎」
網膜色素変性症の少女が、時計塔から転落死した話。他殺でも、自殺でも、そして事故死でもない状況下で、一体彼女に何が起こったのか?…っと言った内容。その可能性をすべて打ち消していく展開が面白く、同時に転落死した原因や犯人が相当に意外。そしてラスト近くで描かれる人間の心の闇が、実に恐い。ちなみに、事件自体は単純なため、すぐに真相が分かり、怪奇現象も起きない。

「首の館」
サイトで知り合い、互いの顔も知らない〈迷宮社〉のメンバーが、「迷宮草子」製作の会合で狗鼻島に集まる。そこで起きる連続殺人。「朱雀の化物」以上に「そして誰もいなくなった」要素の強い作品。しかも元ネタ同様のサスペンスでなかなか読ませるエ� �ソードに仕上がっている。だが一番感心したのは犯人の正体で、意外な犯人でありながら、注意深く読めばちゃんと分かる仕掛けになっているところ。いや〜、はっきり言ってこれには気が付かなかったよ。後、本エピソードで「この同人誌を読むと、何故、怪奇現象が起こるのか?」っと言うことが判明する。いや、いや、これなら、怪奇現象の一つや二つ起こっても不思議なじゃない。


「迷宮草子」
すべての謎を解き終えても、怪奇現象は終わらなかった。…っと言う、後日談的なエピソード。ここで、これまでの推理の不備を述べる訳だが、これは私も不審に思っていた事でなかなか面白かった。ただ、本エピソードはミステリーでなく、ホラーとして閉める終章にすぎない。途中でいきなり以外すぎる影の存在が浮かび上がってくるが(さすがにそれはありえねぇ…っと思った)、これもホラーの要素の一つにすぎない。つまり、あくまでも本書をホラーにしたかったのだろう。そう言う意味でも、この終章は賛否両論があると思う(ミステリーとしての要素を次々を打ち消している訳だし)。でも本書は、ミステリーとホラーが必然的に混合された、まれに見る傑作� �言って良いと思う。それもとびっきり面白い。

さて、すべてを読み終えて、私が一番のお気に入りだったのは「霧の館」、ミステリーとしての完成度が高かったのは「朱雀の化物」と「首の館」、 ホラーとして怖かったのは「子喰鬼縁起」と「朱雀の化物」、…っ言ったところだろうか。★★★★★



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